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桐山第一高校(仮名)文芸部にはなぜ3年生がいないのか

作:阿川 民


上演時間:60分出演:5人

あらすじ

すじ 文芸部の1年生・堂ヶ崎凛音は、部室で先輩たちが赤い本の光によって倒れ、世界が巻き戻るという不可解な現象に巻き込まれる。凛音だけが記憶を保持したまま同じ「部室での一日」を繰り返し、夢実や先輩たちに協力を求めながら原因を探るが、何度試しても先輩たちの倒れる運命は変わらない。やがて、舞台外から現れたストーリーテラーにより、文芸部が「3年生が存在しない」という呪われた物語の登場人物として書かれている事実が明かされる。凛音はループの中で集めた仲間の記憶と、舞台に残された“設定の矛盾”を武器に、ストーリーテラーの誤ったプロットを突き崩し、自分たちの物語を取り戻そうと立ち向かう。


■登場人物 1.ストーリーテラー 2.私 3.友達 4.先輩① 5.先輩② 1.ストーリーテラー ・名前なし ・枠外の不可視の存在で、客席と舞台との間のつなぎ役 ・客観視、第三者的視点 2.私 ・堂ケ崎凛音(ドウガサキリンネ) ・高校一年生 ・女性 ・ミステリー好き ・読書好きが高じて「文芸部」へと入部した ・疑り深い性格 3.友達 ・朝木夢実(アサキユメミ) ・高校一年生 ・女性 ・文学好き ・同じクラスの凛音に誘われて「文芸部」へと入部した ・自己主張が苦手で流されやすい性格 4.先輩① ・波多野春馬(ハタノハルマ) ・高校二年生 ・男性 ・「文芸部」の部長 ・純文学や古典への思い入れが強い ・部活動における中心的人物 ・シニカリストで悲観的な性格 5.先輩② ・遠藤園(エンドウソノ) ・高校二年生 ・女性 ・文学はオールジャンル好き ・「文芸部」の副部長 ・部員全員のメンター的な存在 --------------------------------------------------------------------------------- <1巡目> ~部室~ ドアを開けて堂ケ崎凛音が部室へ入ってくる。 凛音:おはようございます。って、誰もいないんだ、一番乗りか。 部室内のテーブルに荷物を置き、椅子に座ってカバンの中から文庫本を取り出して読み始める。 続いて部室へと、朝木夢実が部室へと入ってくる。 夢実:おつかれさまです。あれ、凛音だけ? 夢実も同じく椅子へと座る。 凛音:そう。先輩たちまだ来てないみたい。 夢実:部室開いてた? 凛音:開いてたよ。何も置いてなかったからまだ来てないとは思うけど。昨日、鍵かけ忘れたかな。 夢実:昨日の鍵当番って凛音じゃない? 凛音:そうだっけ、やっちゃったかな。まあ、しょうがない。 夢実:取られるようなものないし、大丈夫でしょ。あ、そうそう。借りてた本返すね。 凛音:お、サンキュ。で、どうだった? ぜひ感想を聞かせていただきたい。 夢実:うーん、なんというか。なんという表現をしたらいいものか難しいです。 凛音:あいまいだなあ。つまらなかったら、そう言ってくれていいんだって 夢実:つまらないとかそういうのじゃなくて。 凛音:なに? 夢実:よく分かんない。 凛音:は? つまらんってことでしょ。 夢実:そういうことじゃないって。なんか、頭に入ってこなかったんだよね。 凛音:どのあたり? 夢実:なんかさ、トリックがあるでしょ、あの同じ部屋の構造が続くやつ。 凛音:あるある。 夢実:そこでお手上げだった、ついていけなくて。 凛音:あー、そうだったんだ。仕方ないかあ、ごめん、面倒くさい内容をお勧めしてしまって。 夢実:大丈夫、ありがとう。変わったタイプのミステリー見てみたいって言ったの私だし。 凛音:あそうだ、私もゲーム返さないと。 夢実:ありがと。こっちはどうだった? 凛音:最後の前で諦めちゃった。バグって進めなくなって、で、wiki見たんだけどさー。まさか戻れないとは思わなくて。 夢実:そのパターンになっちゃったんだね。ごめん、先言っとけばよかったね。 凛音:ううん、大丈夫、なんか予兆あったのに見逃した。 部室のドアが開き、遠藤園が入ってくる。 園:おつかれさま。二人だけ? 凛音・夢実:おつかれさまです。 園:春馬君、今日は皆に話があるって言っていたのに。 凛音:そうなんですか。なんの自白ですかね。 夢実:犯人みたいに言わないで。 園:(笑) 園:何の話かは分からないけどさ。自嘲的に大げさになんでも言うから。 園:で、二人は何してたの? 凛音:私たちも来たばかりなんで大したことしてないです。本の話してました。 夢実:先輩は次の桐祭用に何か書くんですか。 園:そうだねー。書こうとは思ってる。 夢実:オリジナルですか? 昨年のすごくよかったです。 園:ありがとう。できればそうしたいなとは思うけどね。 凛音:私も書きたいと思ってるんです。短編とか。 園:いいと思うよ。楽しみ。どういうやつ? 凛音:できればミステリーにしてみたくて。この学園の不思議とかテーマにして。 夢実:学園七不思議みたいなやつ? 凛音:そうそう! 夢実:この学園にそんな七不思議みたいなのってあったっけ? 園:私は聞いたことはないけど。 凛音:私気付いてしまったんですよ。この文芸部にも学園の不思議があるってことを。 凛音は大げさに部室内をぐるりと見渡してみせる。 あれ?という不思議な顔をする凛音。 すると、部室のドアが開いて、波多野春馬が入ってくる。 春馬:この俺の存在のことか、その不思議とやら。 凛音:立ち聞きっすか。趣味悪っ。 春馬:遅れてしまいすまない、生徒諸君。優雅にカフェテリアで思索に耽っていたところ、部活があることを思い出し馳せ参じた次第だ。 園:いつもの階段下で缶コーヒー飲んでただけでしょ。 凛音:暗っ! 夢実:いつものって、そういう固定席みたいなのがあるんですか。 春馬:特等席なんだ。アンニュイな気持ちなときはそこが俺を迎えてくれる。君たちのような若輩者どもには分からんだろうがな、この俺の百年の孤独など。 園:私は同級生ですけど。 凛音:春馬先輩って友達いるんですか。部室以外で見たことないんだけど。 夢実:こら、言っていいことと悪いことがあるでしょ。 春馬:俺にそういう煽りは通じないからな、ある意味で無敵の人と言える存在なのだ。 園:訳わからないこと言ってないで、今日は何か打ち合わせあるんじゃなかった? 春馬:すまない、生徒諸君。そうだった。 春馬がカバンから書類を取り出す。それと共に赤い本が床に落ちる。 春馬:っと、これは関係ない。 春馬は赤い本をまたカバンへと戻すと、取り出した書類を部員へと配る。 春馬:いよいよ、時は来たれり、新歓の時期の到来だ。新歓で新入生を何人獲得できるかが、この文芸部の存続にかかっている。そのことは諸君も重々承知かと思う。 園:そうだね、文芸同好会も4人しかいないし。 春馬:シャラップ! 園君。そのなんとか会とかいう忌まわしき呪いの言葉を吐くのはやめたまえ。言霊ということを知らないのか。 園:だって、部員4人だから同好会… 春馬が大げさなポーズで園を指さす。 春馬:文芸部は学園の創設当時より脈々と続いている歴史と伝統を持つコンサバティブかつトラディショナルな部なのだ。それを我々の代で終わらせてしまうということなどあってよいはずがない。よって、新入生に大いに興味関心を持ってもらうため、我々の最大限の力で新歓に挑まねばならないのだ。 園:また大げさな。呪いとか言っちゃってさ。 凛音:でも、新入生に入ってもらうのは大賛成です。部員はたくさんいた方が盛り上がりますし。っていうか、私たちももう2年なんだ。先輩たちも3年っすね。 夢実:部員といえば、私も気になっていることがあって。 春馬:なんだ? 夢実:どうしてこの部って3年生がいないんですか? 凛音:あ! そうそれ! 私はそれがこの学園の不思議だと思ってたんだよね。 春馬と園は顔を見合わせるが何も言わない。 園:なんでだろうね。さ、それはさておき、春馬君も頑張ろうと言っているのだから、新歓に向けた打ち合わせやるよ。 一同:はい! 部員たちが机を囲んであれやこれやと打ち合わせをしている。 すると、春馬のかばんが赤く光りだす。 驚く一同。 倒れる春馬と園。倒れた二人に駆け寄る夢実。 凛音は春馬のバッグから光るものを取り出すと、それは先ほどの赤い本だった。 夢実:先生呼ばないと。先輩たち息してない。ちょっと、凛音! 凛音は光る赤い本を掲げる。 凛音:これなに? 赤い光に包まれていく。 <2巡目> ~部室~ ドアを開けて堂ケ崎凛音が部室へ入ってくる。 凛音:おはようございます。って、誰もいないんだ、一番乗りか。 凛音が辺りを見渡して、腕組みをして不思議な顔をする。 凛音:あれ? 何でここにいるんだっけ? あ! 先輩たちは? 凛音が部室内を駆け回るが、部室には凛音しかいない。 凛音:夢実! 園先輩! 春馬先輩! 夢実:おつかれさまです。あれ、凛音だけ? 夢実はテーブルに荷物を降ろし椅子へと座る。 夢実:部室開いてた? 凛音は夢実をじっと見つめる。 凛音:先輩たちどうなったの? 先生が連れてった? 夢実:凛音しかいないんじゃなかったの? 先生来てた? あ、そうそう借りてた本返すね。 凛音:さっき返してもらったでしょ、ってあれ? 何で持ってるの? 夢実:こないだ借りたから。 ~部室前にストーリーテラー(以下、「ス」と記載)登場~ キャストは静止 ス:演劇をご鑑賞中の紳士淑女の皆さま、突然のご無礼を申し訳ありません。私はこの物語のストーリーを務めるものでございまして、名乗るほどのものではございません。ただ、ストーリーテラーの登場に驚かれたことと思います。御覧のとおり、凛音はタイムリープでこの物語の最初へと戻されてしまいました。彼女だけはタイムリープ前の記憶を持っている様子です。何が起こっているのかわからず不安な様子ですが、ご鑑賞中の皆々様も先ほどの記憶をお持ちかと思いますので、孤独な凛音の不安な気持ちに寄り添っていただき、温かい心で見守っていただければ幸いです。さてそれでは『桐山第一高校(仮名)文芸部にはなぜ3年生がいないのか』の続きをご覧ください。 ストーリーテラーが退出。キャストが動きを再開。 凛音が周りを見渡して首をかしげる。 凛音:先輩たち倒れてないよね? 夢実:何のこと? 前の体育祭のリレーで張り切った春馬先輩がラストスパートで両方とも靴が脱げて倒れたときのこと? あれは倒れたっていうか転がったというか、見事だったよね。 凛音:いやいや、そんな前のことじゃなくて、さっきのことなんだけど。なんか変なんだよね。ま、先輩たちが無事ならそれでいいんだけど。 夢実:無事とかなんか変なこと言わないでよ。今日はまだ先輩たちに会ってないから。 凛音:ごめん、私の勘違いだったみたい。 夢実:そうそう、本ありがとね。でも、トリックが私には難しくて入ってこなかったです。 凛音:うん、ああ、そうだよねごめん。私もゲーム返さないと。 夢実:ありがとー。クリアできた? 凛音:バグって進めなくなっちゃったんだよね、wiki見たときにはもう遅くて。 夢実:そのパターンになっちゃったんだね。ごめん、先言っとけばよかったね。 凛音:ううん、大丈夫。事前にパターンみたいなのあったのに。 部室のドアが開き、遠藤園が入ってくる。 園:おつかれさま。二人だけ? 凛音:先輩! よかった無事で。 園:なになに? 何かあった? 凛音:いえ、先輩が無事ならいいんです。やっぱり、私がおかしかったのかな。 夢実:それ何の告白なの? 園:(笑) 園:で、二人は何してたの? 凛音:私たちも来たばかりなんで大したことしてないです。あと、先輩が無事なことを喜んでました。 夢実:訳わからない喜びしているのは凛音だけね。先輩は次の桐祭用に何か書くんですか。 園:そうだねー。書こうとは思ってる。 夢実:オリジナルですか? 昨年のすごくよかったです。 園:ありがとう。できればそうしたいなとは思うけどね。 凛音:私も書きたいと思ってるんです。短編とか。 園:いいと思うよ。楽しみ。どういうやつ? 凛音:できればミステリーにしてみたくて。この学園の不思議とかテーマにして。 夢実:学園七不思議みたいなやつ? 凛音:そうそう! 夢実:この学園にそんな七不思議みたいなのってあったっけ? 園:私は聞いたことはないけど。 凛音はあたりを見渡す。 凛音:例えば見たことないものが突然現れたりとか。そういう超常現象とかないんですか。あの垂れ幕から異世界につながっていたりとか。 部室のドアが開いて、波多野春馬が入ってくる。 春馬:俺がここにいるということ、それこそ存在の芸術。 凛音:立ち聞きっすか。趣味悪っ。 春馬:遅れてしまいすまない、生徒諸君。優雅にカフェテリアで思索に耽っていたところ、部活があることを思い出し馳せ参じた次第だ。 園:いつもの階段下で缶コーヒー飲んでただけでしょ。 凛音:暗っ! でも、無事でいてくれてよかったです。根暗でも無事なので何よりです。 春馬:安心しているんだか侮辱しているのだか分からん口調だな。 夢実:春馬先輩に、階段下の固定席みたいなのがあるんですか。 春馬:特等席なんだ。アンニュイな気持ちなときはそこが俺を迎えてくれる。君たちのような若輩者どもには分からんだろうがな、この俺の百年の孤独など。 園:私は同級生ですけど。 春馬:俺にそういう煽りは通じないからな、ある意味で無敵の人と言える存在なのだ。 園:そういえば、今日って打ち合わせするんでしょ? 春馬:すまない、生徒諸君。そうだった。 春馬がカバンから書類を取り出す。それと共に赤い本が床に落ちる。 春馬:っと、これは関係ない。 春馬は赤い本をまたカバンへと戻すと、取り出した書類を部員へと配る。 春馬:いよいよ、時は来たれり、新歓の時期の到来だ。新歓で新入生を何人獲得できるかが、この文芸部の存続にかかっている。そのことは諸君も重々承知かと思う。 園:そうだね、文芸同好会も4人しかいないし。 春馬:シャラップ! 園君。そのなんとか会とかいう忌まわしき呪いの言葉を吐くのはやめたまえ。言霊ということを知らないのか。 園:だって、部員4人だから同好会… 春馬が大げさなポーズで園を指さす。 春馬:文芸部は学園の創設当時より脈々と続いている歴史と伝統を持つコンサバティブかつトラディショナルな部なのだ。それを我々の代で終わらせてしまうということなどあってよいはずがない。よって、新入生に大いに興味関心を持ってもらうため、我々の最大限の力で新歓に挑まねばならないのだ。 園:また大げさな。呪いとか言っちゃってさ。何の呪いなのよ。 凛音:でも、新入生に入ってもらうのは大賛成です。部員はたくさんいた方が盛り上がりますし。っていうか、私たちももう2年なんだ。先輩たちも3年っすね。うん、やっぱりこのあたりも知ってる。夢実がこの部に3年生がいないって言いだすのも知ってる。 夢実:やっぱり気になってた? 先輩方理由って知らないですか? 春馬と園は顔を見合わせるが何も言わない。 園:なんでだろうね。さ、それはさておき、春馬君も頑張ろうと言っているのだから、新歓に向けた打ち合わせやるよ。 一同:はい! 部員たちが机を囲んであれやこれやと打ち合わせをしている。 すると、春馬のかばんが赤く光りだす。 凛音:やっぱり! 倒れる春馬と園。二人に駆け寄る夢実。 凛音は春馬のバッグから光るものを取り出すと、それは先ほどの赤い本だった。 夢実:先生呼ばないと。先輩息してない。ちょっと、凛音! 凛音は光る赤い本を掲げる。 凛音:これなんなの? 赤い光に包まれていく。 <3巡目> ~部室~ ドアを開けて堂ケ崎凛音が部室へ入ってくる。 腕組みしながら部室内を見渡す。 凛音:やっぱり誰もいなくて、私が一番乗り。だいぶ記憶もはっきりしてきた。赤い本が光りだすと先輩たちが倒れて、そして元に戻ってる。このあと何食わぬ顔で夢実が入ってきて、私に本を返す。多分そうなるんだと思う。 夢実:おつかれさまです。あれ、凛音だけ? 夢実はテーブルに荷物を降ろし椅子へと座る。 凛音:ほら、やっぱりそう。部室開いてた。 夢実:昨日の鍵当番って凛音じゃなかった? 凛音は部室内を歩き回る。 凛音:貸してた本のことはいったん大丈夫。今度にしてもらっていい? 夢実:あれ? 返すって話してたっけ? 凛音:うん、今度で大丈夫。あと! トリックとかそういう話も今度にしよ。 夢実:あー、それ言いたかったんだけど… 凛音:シャラップ! 今はダメ。何がそうさせているか分からないから。 夢実:口調が春馬先輩みたいになってきたよ。 凛音:ゲームも今度返すね。バグって終わった。 ~部室前にストーリーテラー登場~ キャストは静止 ス:前回と同様、凛音はまたタイムリープして戻ってきているようです。ただ、前回よりも明確に自覚している模様。さらには、この問題の要因が何なのかの推察をし始めているようです。皆さまも凛音と同じく、推察しながら御覧いただけましたら幸いです。それでは『桐山第一高校(仮名)文芸部にはなぜ3年生がいないのか』の続きをご覧ください。 ストーリーテラーが退出。キャストが動きを再開。 部室のドアが開き、遠藤園が入ってくる。 園:おつかれさま。二人だけ? 凛音:私達二人だけですし、何も始まっていないので、ここまで大丈夫だと思います。 園:なになに? 何かあった? 凛音:いえ、何もなかったんです。それでいいんです、それで。 夢実:なにそれ、事件の犯人みたい。何もなかったんだ、なんて。 夢実:そういえば、先輩は次の桐祭用に何か書くんですか。 園:そうだねー。書こうとは思ってる。 夢実:オリジナルですか? 昨年のすごくよかったです。 園:ありがとう。できればそうしたいなとは思うけどね。凛音も何か書こうと思ってる? 凛音:え? あれ? 園:こないだそういうこと言ってた気がしたんだけど。 凛音:先輩! それいつのことですか? 私が何か書きたいって言っていたのって。 夢実:私も聞いた気がするし、いつも言ってるじゃない? どしたの、そんなに大声出して。 凛音:すみません、今回は何も無いようにしたくて。 園:また何か新しいミステリーにはまってる? さっきから事件を隠蔽しているみたいよ。 凛音はあたりを見渡す。 部室のドアが開いて、波多野春馬が入ってくる。 春馬:この密室において何かしらの事件が発生している予感。 凛音:春馬先輩。いいです、その方向転換。いつもなら罵ってしまいますが、今回は支持します。続けてください。 春馬:讃辞に感謝するぞ、生徒諸君。我が意思が後輩へと、大いなる遺産となって引き継がれていることに深い感動を覚える。たとえ、部室へと続く道が険しいD坂であったとしても来た甲斐があったというものだ。 園:また大げさに。遅れてきた人が言うセリフじゃない。 春馬:失礼した。今日は皆と建設的かつ前向きな議論を交わすためにやってきたのだ。 春馬がカバンから書類を取り出そうとする。 凛音:ちょっとお待ちください。先輩は手を動かさないで。 凛音が春馬のカバンの中身を探る。 春馬:凛音君。君がしていることは、重篤な人権侵害だぞ。おいおい勝手に触るな。俺の存在は限りなく透明なのか。 凛音はカバンから部員に配布するための書類の束を取り出す。だが、赤い本はカバンの中から見つからない。 凛音:春馬先輩。赤い本は? 春馬:いったい何の言いがかりなんだ? 俺は何を自白させられるのだ。 園:春馬君、赤本もう始めているの? 偉いなあ。 凛音:ないならいいんです。釈放します。 春馬は大げさに飛び退き、そして襟を正して話し出す。 春馬:我々ももうすぐ3年。光陰矢の如し、歳月人を待たずだ。だが、もうすぐ3年になるということは、いよいよ新歓の時期の到来だ。新歓で新入生を何人獲得できるかが、この文芸部の存続にかかっている。そのことは諸君も重々承知かと思う。 園:そうだね、文芸同好会も4人しかいないし。 春馬:シャラップ! 園君。そのとか会とかいう忌まわしき呪いの言葉を吐くのはやめたまえ。言霊ということを知らないのか。 園:だって、部員4人だから同好会… 春馬が大げさなポーズで園を指さす。 春馬:文芸部は学園の創設当時より脈々と続いている歴史と伝統を持つコンサバティブかつトラディショナルな部なのだ。それを我々の代で終わらせてしまうということなどあってよいはずがない。よって、新入生に大いに興味関心を持ってもらうため、我々の最大限の力で新歓に挑まねばならないのだ。 夢実:そうですね。謎にこの部には3年生がいないですし。 凛音:あ! 夢実:なんでこの部って3年生がいないんですか。もしいたら正式に部のままだったんでしょうし。 春馬と園は顔を見合わせるが何も言わない。 園:なんでだろうね。さ、それはさておき、春馬君も頑張ろうと言っているのだから、新歓に向けた打ち合わせやるよ。 部員たちが机を囲んで打ち合わせをするが、凛音だけが落ち着かずにあたりを見渡している。 園:ほら、凛音も集中集中。 すると、部室内の書棚が赤く光りだす。 凛音:そんなところに赤い本があったなんて。 倒れる春馬と園。二人に駆け寄る夢実。 夢実:先生呼ばないと。先輩息してない。ちょっと、凛音! 凛音:ここで触らなかったら、このままってことだよね。 夢実:先生呼んできてよ! 凛音:だめ、それじゃあ終われない。もう一度! 凛音が赤い本を掲げる。 赤い光に包まれていく。 <4巡目> ~部室~ ドアを開けて堂ケ崎凛音が部室へ入ってくる。 凛音:もう、夢実にも協力してもらうしかない。 夢実:おつかれさまです。あれ、凛音だけ? テーブルに荷物を降ろそうとする夢実の肩を両手でつかむ凛音。 凛音:よく聞いて。 夢実:なになに? 凛音:これから私に協力してほしい。 夢実:え? ゲーム? いいけど。 凛音:違う違う、これからちゃんと説明する。 向き合って座る凛音と夢実。 凛音:おかしなこと言っているように聞こえるかもしれないんだけど、私、このやり取り繰り返しているの4回目なの。 夢実:もっとあるんじゃない? 部活入って何日目よ。 凛音:そういうことじゃなくてさ、うーん、どうすれば分かってくれるの。 夢実:落ち着きなって。何があったの。 凛音:これから先輩たちがやってくるのね。 夢実:うん。 凛音:それで新歓頑張ろうって打ち合わせをするわけ。 夢実:うんうん。ありそう。 凛音:それで先輩たちは倒れる。 夢実:何でよ。 凛音:そして全部が赤く光る。 夢実:救急車? 凛音:で、私はここにまたいるってことになる。どう、分かった? 夢実:何も分かんないってことだけ分かった。 夢実:(笑) 頭を抱えて部室内をくるくると歩き回る凛音。 ~部室前にストーリーテラー登場~ キャストは静止 ス:今回は凛音が夢実に協力を求めたようでしたが、凛音のタイムリープを伝えるのは難しいようです。凛音だけがタイムリープの記憶を持っている中で、繰り返される場面は果たしてどのようになるのでしょうか。凛音は同じ結果を繰り返してしまうのか、起きた悲劇を受け入れるしかないのか。誰がこの問題の結果を変えることができるのでしょうか。皆々様もご一緒に、『桐山第一高校(仮名)文芸部にはなぜ3年生がいないのか』の続きをご覧ください。 ストーリーテラーが退出。キャストが動きを再開。 部室のドアが開き、遠藤園が入ってくる。 園:おつかれさま。二人だけ? 夢実:はい、さっき来たところです。 園:凛音、どうしたの。真剣な顔して。 凛音:本気で物事を伝えたいときってどうすればいいですか? 園:どうしたどうした。 夢実:凛音がさっきからなんか変なこと言っているんです。変なこと言ってるのはいつもなんですけど、とにかく変なんです。 凛音:園先輩、教えてください。私はどうしても伝えないとならないことがあって。だけど伝わらないときってどうします? 園:ごめん、まじめな話だったね。私だったら相手の目を見て。 凛音が夢実の顔をもって目を向き合わせる。 園:それで相手のことを信じる。信じてもらえるように伝える。 凛音:私は夢実を信じてます。 夢実:はい、わかりました(笑) 大笑いする夢実。 凛音が膝から崩れ落ちる。 凛音:あー、もうだめじゃん。 園:伝えることがあるなら、ちゃんと言わないとわからないでしょうよ。信じてもらいたいことがあるんでしょう。 凛音:そうなんです。でも時間もなくて・・・ 部室のドアが開いて、波多野春馬が入ってくる。 春馬:ライ麦畑で捕まえて。キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン。凛音君は捕まえてもらうのではなく、自らが捕まえにいかねば伝わらないのではないか。 凛音:うわ、また立ち聞きっ! 春馬:またとは何だ失敬な。先輩らしい助言をしてやっているというのに。 凛音:春馬先輩が来たってことは、いよいよエンドに近づいているんだ。ああ、もうおしまいだ。 園:ちょっと凛音。そんな言い方、春馬君に失礼でしょう。いくら春馬君だって、人の心はあるのよ。 夢実:その方がひどい言い方なんですが。 春馬:心のこもったフォローに感謝するよ。 園:ごめんなさい、つい。 春馬:さあ、生徒諸君。今日集まったのは・・・ 凛音:先輩! すみません。ちょっとお待ちを。夢実! ちょっときて。 夢実:え? なに? 凛音は夢実を部室の端へと連れていく。 凛音:さっきから変なこと言っててごめん。でも本当に真剣なの。 夢実:信じてるって言ってるじゃない。 凛音:だから教えて! 私の知らない秘密! 夢実:え? 秘密? 凛音:そう、私が知らない、本当に夢実だけの秘密。 夢実:それがまじめな話なの? 凛音:もうこれしかないと思う。ほんと! お願い! 春馬:生徒諸君、そろそろ集まり給え。いよいよ新歓の時期の到来だ。新歓で新入生を何人獲得できるかが、この文芸部の存続にかかっている。そのことは諸君も重々承知かと思う。 園:そうだね、文芸同好会から昇格しませんとね、部長。 春馬:シャラップ! 園君。そのなんとか会とかいう忌まわしき呪いの言葉を吐くのはやめたまえ。言霊ということを知らないのか。 園:(笑) 春馬が大げさなポーズで園を指さす。 春馬:文芸部は学園の創設当時より脈々と続いている歴史と伝統を持つコンサバティブかつトラディショナルな部なのだ。それを我々の代で終わらせてしまうということなどあってよいはずがない。よって、新入生に大いに興味関心を持ってもらうため、我々の最大限の力で新歓に挑まねばならないのだ。 園:(笑) 園:大げさすぎて笑っちゃう。ちょっと泣いた。ごめん、ちょっとタオル取らせて。 園がカバンを開けると、そこから赤い本が出てくる。 園が赤い本を拾い上げて春馬へと渡す。 園:これ春馬君のだっけ。 光りだす赤い本。倒れる春馬と園。二人に駆け寄る夢実。 凛音が夢実に近寄る。 夢実:先生呼ばないと。先輩息してない。ちょっと、凛音! 凛音:お願い! 私に、夢実の、秘密を教えて! 赤い本を掲げながら、赤くなる世界で夢実からのメッセージを聞く凛音。 <5巡目> ~部室~ ドアを開けて堂ケ崎凛音が部室へ入ってくる。 凛音:今度こそ夢実に協力してもらう。 夢実:おつかれさまです。あれ、凛音だけ? テーブルに荷物を降ろそうとする夢実の肩を両手でつかむ凛音。 凛音:ちょっと聞いて。 凛音は夢実に耳打ちする。 驚いて飛びのく夢実。 夢実:な、な、なんで、なんで凛音が知ってるの? 凛音:いい? これは4回目の夢実から教えてもらったこと。こないだまでの私は知りようがなかったこと。でも、夢実は私を信じて教えてくれた。 夢実:4回目? 凛音:そう、私はずっとこの日を繰り返しているの。でも、一人じゃどうにもならなくて。 うなだれる凛音を抱きかかえる夢実。 夢実:信じるよ。なんだろうと信じる。 凛音:ありがとう! 凛音:これから先輩たちが順にやってきて、新歓を頑張ろうという打ち合わせをした後、赤い本が赤く光って、それで先輩たちが倒れてしまうんだ。 真剣に見つめる夢実に凛音が向き合う。 凛音:笑わないの? 夢実:なんで? 凛音:ううん。いいの。ありがとう。どうやっても先輩たちが倒れてしまうんだけど、二人なら何とかなるかなって。 夢実:そうだね、きっと大丈夫。私達で何とかしよう。 ~部室前にストーリーテラー登場~ キャストは静止 ス:凛音の思いがようやく凛音に届いたようです。凛音と夢実はこのループにどのように立ち向かうのでしょうか。一人で成しえなかったこと、それは果たして二人でどうにかできるものなのでしょうか。幾度も試すものの倒れてしまう先輩たち、凛音のループは果たしていつまで続くのか。それでは『桐山第一高校(仮名)文芸部にはなぜ3年生がいないのか』の続きをご覧ください。 ストーリーテラーが退出。キャストが動きを再開。 部室のドアが開き、遠藤園が入ってくる。 二人の異様な雰囲気に感づく園。 園:どうしたどうした? 何があったのよ。 凛音:いえ、大丈夫です。なんでもありません。あと先輩、先ほどはありがとうございました。先輩のおかげです。 園:あー、パンのお金のこと? 後でいいよー。大丈夫。 凛音:すみません、それもきっとちゃんと終わったら返します。 夢実が凛音に小さな声で聞く。 夢実:(私は何をすればいいの?) 凛音:(何もしなくても大丈夫。でも何か異変があったら教えて) 夢実:(OK) 園:なになに、お金の相談? 心配しなくても取り立てたりしないって。 凛音:すみません、違うんです。先輩のことが心配で。 園:なんでよ。感傷的じゃないの。そういう本とか、ゲームとかみたの? 凛音:いえ、そういうんじゃないですけど、伝えるのが難しくて、すみません。 園:私の成績のことなら心配ご無用。もう下がらないから(笑) 夢実:(解釈不一致なんだけど) 凛音:(なに?) 夢実:(これって異変じゃないの? 先輩のイメージと違う) 凛音:(たぶん異変じゃない) 園:聞こえてるぞ。誰が異変だって(笑) 凛音:すみません! 部室のドアが開いて、波多野春馬が入ってくる。 春馬:8番出口はここか? 凛音:そうです。どうぞ引き返してください。 園:こらこら(笑) 凛音は春馬のカバンをひったくり、中身をひっくり返す。 春馬:おいこら。自然な仕草で俺の人権を侵害するんじゃない。 中身には赤い本はなく、部員に配布するための書類の束しかない。 凛音:園先輩、先輩のカバンの中にも変な赤い本はないですか? 園はカバンの中身を見るが出てこない。 園:ないみたい。何か探し物? 夢実:(あれは?) 凛音:(なに?) 夢実が指さす方には学園祭用の垂れ幕が残っている。 凛音:(しまい忘れただけじゃないの?) 夢実:(え? でも) 春馬が二人の近くに寄ってくる。 凛音:うわ、びっくりした。自然なしぐさで人権侵害しないでくださいよ。 春馬:そのままお返しする。その言葉。それで君たちは何をしているのだ。今日は大事な話があるのだが。 凛音:失礼しました。でも先輩お二人にも聞いていただきたいことがあるんです。 春馬:聞こう。 凛音:このあと、春馬先輩は新歓に関する話をして、打ち合わせしようということをいう予定ですよね。 春馬:うむ。察しがいいな。 園:春馬君から聞いてた? 凛音:春馬先輩はこれから新歓を頑張ろうと言って、私達と打ち合わせをします。 春馬:まあそうなるだろう。おおかた予測できることだ。 凛音:そして先輩たちは倒れてしまうんです。それで私はそれを止めたくて何度もこのことを繰り返しているんです。 春馬:ふむ。 凛音:笑わないんですか。 園:真剣に話している人のことを笑ったりなんてしないよ。 凛音:ありがとうございます! だんだん時間が無くなってくるので聞いてください。今回は夢実にも協力してもらっていたんです。先輩たちにも協力してもらいたくて。 園:もちろん、できることなら何でもするよ。 凛音:先輩たちしか知らない秘密を私に教えてください! 園:春馬君、もしかしたらあの事かも。 春馬:そうかもしれないな。 凛音は二人から何かを説明される。 凛音:え? それって。 赤い本が部室の机の中から出てきて光りだす。 倒れる二人。駆け寄る夢実。 赤い本を掲げる凛音。 凛音:次こそきっと大丈夫。もう一度! <6巡目> ~部室~ ドアを開けて堂ケ崎凛音が部室へ入ってくる。 部室内を色々と調べて回るうちに夢実が入ってくる。 夢実:おつかれさまです。あれ、凛音だけ? テーブルに荷物を降ろそうとする夢実の肩を両手でつかむ凛音。 凛音:ちょっと聞いて。これでもう一度信じてほしい。 凛音は夢実に耳打ちし、驚いて飛びのく夢実。 夢実:な、な、なんで、なんで凛音が知ってるの? 凛音:いい? これは4回目の夢実から教えてもらったこと。こないだまでの私は知りようがなかったこと。でも、夢実は私を信じて教えてくれた。 夢実:4回目? 凛音:そう、私はずっとこの日を繰り返しているの。そしてこれはもう6回目。今度こそ、この悲劇を終わらせる。私を信じてほしい。 夢実:オッケー。いいよ。 凛音:ずいぶんとあっさりだね。 夢実:そんなこと伝えるほど重大なことだったんでしょ、何があっても信じる。で、何をすればいいわけ。 凛音:何もしなくても大丈夫。先輩たちが揃ったら始める。 ~部室前にストーリーテラー登場~ キャストは静止 ス:凛音は皆に打ち明けたものの、事態は解決に至りませんでした。ループし続けるこの物語。凛音は覚悟を決めているようです。いったい何を始めるつもりなのか。皆々様も凛音の行く末を見守りいただき、『桐山第一高校(仮名)文芸部にはなぜ3年生がいないのか』の続きをご覧ください。 ストーリーテラーが退出。キャストが動きを再開。 部室のドアが開き、遠藤園が入ってくる。 急いで園に駆け寄る凛音。そして園へと耳打ちをする。 園:え! 凛音:分かってもらえましたか。前回の先輩たちからのメッセージです。 部室から出ていき、急いで春馬を連れてくる園。 春馬も真剣な面持ちで部室へと入ってくる。 春馬:凛音君、道すがら園君から話は聞いた。君はこの物語を終わらせに来たんだな。 凛音:そうです。 春馬は語りだす。 春馬:ちょうど1年前。我々がまだ1年生だったころだ。 ~部室前にストーリーテラー登場~ キャストは静止 ス:春馬、園から語られたのは、ちょうど1年前。当時、1年生であった春馬と園。2年生もこの部活にはいたのです。ただ3年生はいなく、新歓で部員を増やそうとしていたのでした。ちょうど同じこの頃、春馬と園も凛音たちと同じように疑問を持ったのです。「桐山第一高校(仮名)文芸部にはなぜ3年生がいないのか」と。春馬と園がその疑問を抱いたとき、この部の中で同じような問題が発生したのです。ただ、その時は3年の先輩が倒れるという現象ではなく、消失するというものでした。幾度もループを繰り返したものの、春馬と園はその現象を解決することができませんでした。繰り返していくうち、二人はある結論に達したのです。では続きをご覧ください。 ストーリーテラーが退出。キャストが動きを再開。 春馬:我々は「文芸部に3年生はいなかった」ことを受け入れてしまった。 園:学園名簿にもいないし、部室にも痕跡すらなくて、私達はそう信じることしかできなかったのかもしれない。 春馬:今思えば悔やんでも悔やみきれないことだが、この世界において、我々が覚えている先輩の姿はどこにもなかった。 凛音:それって先輩たちが悪いわけじゃないですよ。きっと違う世界にいるんです。 春馬:そう願いたいところだ。我々もあのときのことが現実だったとは今でも思えないから。 夢実:だとしたら、今回のことも変えられないってこと? 凛音:そんなことない、絶対にそうはさせないから。 凛音が皆の中心になって話し出す。 凛音:私がこのループを繰り返す中で、どうにか事態が変わらないか試してきました。何度も試してきたんです。でも、どうしても先輩たちが倒れてしまうという現象を避けることができませんでした。先輩たちが経験したように、このことは物語としてこの部において繰り返されてきたのかもしれません。 春馬:考察を続けてくれ。 凛音:前回のループ、5回目のときに、先輩たちは私の知らない秘密として、同じ現象を体験したかもしれないという話をしてくれました。それは今回、先輩たちに私のループの体験を信じてもらえるきっかけとなったんです。そしてそれは、この物語が「3年生がいないこと」を前提に作られているのだと気付かせてくれたんです。 ~部室前にストーリーテラー登場~ キャストは静止 ス:おやおや、皆々様、少々お待ちください。 凛音:誰が待ってやるか! 凛音がうなりながら動き出し、呪縛から抜け出してくる。 ス:凛音さん、まだ物語の途中ですよ。そちら側に早くお戻りください。 凛音:動けた。 ス:お客様がお待ちなのです。早く戻って。『桐山第一高校(仮名)文芸部にはなぜ3年生がいないのか』の続きを演じていただきませんと。 凛音:勝手に名前まで付けて。何を演じろって。私達は物語の中に生きてるんじゃない。 ス:困ったキャストさんだ。 凛音:やっぱりそういう物語だってことだね。なぜ3年生はいないのか。 ス:左様左様。その部活では3年生に何らかの理由になれず、脈々と呪いが継がれていくのです。悲しいことにあなたも消えゆく運命。 凛音:誰が消えてやるか。私達はあなたの筋書き通りに生きているんじゃないの。全員が自分の人生っていう物語を紡いでいるの。 ス:そういう思いを持っているのは大いに結構。ただ運命は変えられないのです。 凛音:残念だけど、そうはいかないの。あなたのプロット、間違えているから。私がこうやって動いているのがその証拠。あなたの赤い本で見てみなよ。 ス:いや、そんなはずは・・・ 凛音:『桐山第一高校(仮名)文芸部にはなぜ3年生がいないのか』なんて言ってるけど、うち、桐島高校だからね。ほら、あそこ見てみな。 垂れ幕には「桐島高校」の文字が掲げられている。 ス:あれ? そんな。 凛音:設定がバグってんの。その赤い本が間違ってるってわけ。 凛音はストーリーテラーから赤い本を奪い取り、ストーリーテラーに押し付ける。 凛音:自分の物語を人に押し付けんな! 赤く光る本。 <?巡目> ~部室~ ドアを開けて堂ケ崎凛音が部室へ入ってこようとするが、鍵がかかっていて開かない。 凛音:あ、鍵当番、私だった。もうすぐ新入生くるのにやばい。 夢実:いいよ、持ってくるからここで待ってて。先輩たちももうすぐ来ると思う。 春馬:生徒諸君、そんなところで何をしているんだ。 園:ドアの前狭いんだから集まらないでって、新入生通れないでしょ。 ~終演~
戯曲パレット - 桐山第一高校(仮名)文芸部にはなぜ3年生がいないのか
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